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ユニークな経歴を持つハイエンドメーカー

ユニークな経歴を持つハイエンドメーカー

 30年以上の歴史を持つハイエンドのスピーカーメーカーだが、いろいろと興味深い要素を持っている。たとえばその主宰者のNjoo Hoo Kong氏。クライオジェニック(極低音に冷やしての物性処理)や超伝導材料をフランクフルト大学で研究し、物理学の修士号を取得しているという。また、メーカー設立当初より、セラミックタイプ、エアモーションタイプ、ホーンタイプなどのスピーカー(ドライバーユニット)も設計。その上でのCFGC(カーボングラファイトコンポジット)採用のユニットやAGC(アバカグラファイトコンポジット)という、マニラ麻とグラファイトの混合材を使ったユニットに到達している。

「DD-ONE+DD6.5の聴かせる上質な世界」
 最初に聴いたのは、ツイーターDD-ONEとミッドウーファーDD6.5の組合せ。インポーターの製作したエンクロージャーとパッシブネットワークを使っている。
その音は印象的だった。高域には上質なしっとりした感覚があり、中低域のあたたかい温度感とともに品のいい感じを持っている。しかも、全体的な分解能自体は低くない。ヴォーカルでのその人特有の感じや、ピアノの立ち上がりのニュアンス、ヴァイオリンソロの倍音がロールオフしながらもきちんと伸びている様子など、アキュレイトな描写力ながらの上質さ、あたたかさなのだ。仕事で疲れた帰路で、最初はBGMに音楽を鳴らしてだして、ほっとした音として楽しめ、気分が昂揚してきてボリュームを上げればしっかりとした骨格を持った音が立ち上がってくるような。そんなシーンを想像させるようなユニットだ。いい音とは何か、という見識がないとなかなかこういう音の方向性には到達しない。

「DDBE-1.5とDD-6.5の2Wayシステム」
きわめて情報量の多い音で高い可能性を感じたが、試聴時の状態としてはもっとウーファーを動かしたいし、高域もフラットな音の出方になだめたいところ。強力なユニットゆえの、暴き立てるようなところもあり、いろいろなクセが聞えてくる。ただし、その高域の金粉が舞うようなシンバルの迸り方や、声のリアルさなど、随所に高いポテンシャルを感じさせてくれた。

「DDBE-1.5・DD-4・DD-6.5の3Wayシステム」
2ウェイで感じた不満が一挙に解き放たれ、高いハイファイ性を獲得しながら、リアルでありつつオーディオ的美音を感じさせる。最低域のレンジも広いし、高域のリニアリティの相当も高い。たとえばヴァイオリンのピチカートの、ごくごく短い時間に発生する音の要素を克明に聴かせてくれる。あるいはグランドピアノでも、この時代のスタインウェイ、というその楽器固有の微細な音色感、トーナルフィデリティの再現性が素晴らしい。音の感触としては若干硬めだが、音自体は良くほぐれ、音像ひとつひとつが立体的だ。システムとしての値段は相当なものになってしまうが、そこがまたハイエンドオーディオのスピーカーメーカーなのかもしれない。リアルでオーディオ的美音の世界を感じさせてくれた。

鈴木 裕

鈴木 裕(すずき ゆたか)
車のみならず、ラジオディレクター・ライターとしても活躍中、オーディオアクセサリー誌での執筆活動を始めAuto Sound誌などでも執筆されています。車に対する造詣も深く、ユーザー様への的確なアドバイスが好評。

取材協力:on and on株式会社
URL:http://e-onandon.jp/

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